POATERS&VIDEOS vol.9
インターラクション・セッション
1.教育プログラム部門:カリキュラム・教育プログラムの紹介や効果の分析結果等
2.ワークショップ手法部門:ワークショップのプロセスや成果の評価等
3.研究部門:イノベーション教育に関する研究の方法や成果
・発表者は割当のルームに留まって頂きます。司会進行も発表者にお願いします。
・参加者は動画・資料を事前視聴している前提で、発表者は冒頭で、2分程度の概要紹介を1、2枚のスライドでお願いします。それ以降は質疑応答を中心に進めて下さい。質疑応答のなかで、適宜必要に応じてプレゼン資料を画面共有して下さい。
・参加者は発表途中であっても自由にルームを移動して結構です。
発表場所・時間
ルーム1 | ルーム2 | ルーム3 | ルーム4 | ルーム5 | ルーム6 | ルーム7 | ルーム8 | ルーム9 | |
第1部 10:45-11:10 | 1-1 | 1-5 | 1-9 | 1-13 | 1-17 | 1-22 | 2-1 | 3-1 | 3-7 |
第2部 11:10-11:35 | 1-4 | 1-15 | 1-10 | 1-14 | 1-18 | 1-21 | 2-2 | 3-2 | 3-6 |
第3部 11:35-12:00 | 1-3 | 1-7 | 1-11 | 1-6 | 1-19 | 1-20 | 2-3 | 3-3 | 3-5 |
第4部 12:00-12:25 | 1-2 | 1-8 | 1-12 | 1-16 | 3-9 | 2-4 | 3-4 | 3-8 |
【1】教育プログラム部門
1ー1『日加学習者のオンライン協働学習における実証研究 』稲田優子(桃山学院大学)
本研究は、グローバル人材育成に焦点をあて、多様なメンバーとの協働学習の内容とその効果を明らかにすることを目的とする。研究対象者は、企業・団体から提供された課題に対して解決策を立案するグローバルキャリアクラス(オンライン)を受講したカナダの3大学と関西学院大学の学習者である。1)知識、2)問題解決力、3)コミュニケーション力、4)異文化理解・チームワーク、5)自信・意欲の5項目について、授業前後で変化があるのかをt検定を用いて分析した。結果、5項目全てにおいて有意な差があった。特に、学習者は、授業において、企業や業界に対するビジネスの知識を蓄積した。また、学習者は、オンライン上で異文化を理解しながら、チームを形成し、議論しながら課題解決のための提案プロセスを学習していたことが明らかになった。本研究から、充実したグローバル人材育成の教育プログラムに必要な事項を示唆する。
1ー2『地域連携における問題解決プロセスに関する一考察』横山広充、西應浩司、三浦慎司(大阪工業大学)
本学の正課である「ものづくりデザイン思考実践演習I」について報告する。本演習は本学ロボティクス&デザイン工学部の3年生前期に配当される学科横断科目として実施されており、2021年度は18プログラムから学生は選択し受講する。今回は18プログラムの中から吉野川水源地の村である奈良県川上村との地域連携プロジェクトの一環として開催された「川上村源流学」を例に取り上げる。本プロイグラムは「持続可能な世界の担い手を育成する」をメインテーマに村長をはじめとした役場や村の方々が講師となり、現在の村の取り組みや様々な課題についてオンライン講義でレクチャーを受けた後、課題を設定し実際に村に訪問しフィルールドワークを実施した後、それぞれの問題解決に向けたソリューションを各グループで提案するものであり、インプットからアウトプットまでのプロセスについて報告する。
1ー3『SHIBAURA探究 IT 教育プログラム(Technology&Innovation)』横山 浩司(芝浦工業大学附属中学高等学校)
2021年4月から中学1年生を対象に探究授業がスタート(探究授業は中学3年間と高校進学後の継続される)した.本校の探究はIT(Information Technology)とGC(Global Communication)に分類されており,本プログラムは探究ITで実施した授業である.
1980年頃のテクノロジー製品(家電)と進化した現代の製品,各々の機能をあげ,当時の製品に対する本質的な問題や解決すべき課題を考えることで、イノベーションについて深く知る.またそれを発表するワークである.
途中,本質的な問題を考える練習や当時の製品を実際に使用したことのある大人(保護者)へのインタビューを行うことで多角的で多様な意見を調査し,対話やAPISNOTEを使用してグループの考えをまとめ(デザイン思考),最後は一人一人が製品の進化について1分間のプレゼンを行う.
本プログラムは今後の先進的なアイデア創出へとつなげていく授業コンテンツとの関連性が大きく,その単元的意義は現存の製品を用いたイノベーションに触れることにある.
1ー4『イノベーション教育のための高大接続』吉永契一郎(金沢大学)
PISAやTIMMSに示されるように、日本の中高生は、国際的に学力が高いにもかかわらず、自発性や自信、アウトプット能力において課題を抱える。これは、イノベーション教育を阻害する要因である。筆記試験が測定するのは、あくまで学力の一部であり、試験勉強という強制力は、大学合格によって、目的意識を失わせることにもなる。この点、新学習指導要領が、「3つの学力の要素」を強調していることは、評価できる。この発表では、大学初年次生を中心とした共通教育の実践、海外調査の結果から、大学入学ではなく、大学での学習を意識した高大接続の実現が課題であることを明らかにする。
1ー5『子どものモチベーションを育むワークショップ事例紹介』金子遥洵(特定非営利活動法人Motivation Maker)
発表者が所属する団体では2010年以降主に小学生とその保護者を対象に好きなことを見つけ興味関心を育むことを通じて学習意欲を高めることを目指した「モチベーション・ワークショップ」を提供してきた。特にひとり親ご家庭等学習機会の限られた環境に暮らす方を主な募集対象としている。2020年2月以前は都内を中心とした会場でのワークショップを実施してきたほか、2020年3月以降はオンラインでのワークショップを行うと共に、2020年春には工作キットの配布を実施した。ワークショップの事例およびプログラム参加者の考え方の変化を紹介する。
1ー6『レジリエント社会の構築を牽引する起業家精神育成プログラム―2021年度実施報告―』
祗園景子(神戸大学)、三上淳(小樽商科大学)、加藤知愛(北海道大学)、石田祐(宮城大学)、友渕貴之(宮城大学)、金井純子(徳島大学)、北岡和義(徳島大学)、阿部晃成(宮城大学)、鶴田宏樹(神戸大学)、武田浩太郎(東北大学)
レジリエント社会の構築を牽引する起業家精神育成プログラム「復興プロセスを振り返って考える未来のレジリエンス」を2021年8月26日から9月25日にかけてオンディマンドとライブを併用したオンラインで英語にて実施した。本プログラムは、防災・減災に資する新規事業のアイデア創出を志向している。プログラムのプロセスフレームは「社会システムの脆弱性を理解する」「極度の状況変化を理解する」「自助・共助・公助を理解する」「社会的価値と経済的価値を理解する」の4つのフェーズとし、それぞれに講義とワークショップを組み合わせたコンテンツを設計した。受講生は最終的にビジネスプランを発表し,ルーブリック評価に基づいたフィードバックをおこなった。Google Jambaordを用いたオンライングループワークやバーチャルリアリティによる被災地のフィールドワークなどについても紹介したい。本プログラムは,文部科学省EDGE-NEXT共通基盤事業として実施した。
1ー7『滋賀医科大学におけるイノベーション教育』松浦 昌宏(滋賀医科大学)
滋賀医科大学では、平成26年度から文部科学省のグローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)に採択され、平成29年度からは同省の次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)に移行し、約8年間のアントレプレナーシップ教育やイノベーション教育を継続してきた。
今回の発表では、この8年間で実施してきたイノベーション教育プログラムを振り返り、現在も継続しているもの、一過性に終息したもの等を分析し、その理由と効果について考察する。また、最近の2年間においては新型コロナウイルス禍の影響により、オンラインでの実施を余儀なくされたプログラムも多く、その良否や長短についても考察する。
更に、上記を踏まえ、今後の滋賀医科大学における効果的なイノベーション教育プロブラムについて構想していることを発表し、学会参加者からフィードバックをいただきたいと考えている。
1ー8『「総合的な探究の時間を中心とした体験活動が非認知能力に及ぼす影響に関して」 -コロナ前・コロナ禍における教育効果の比較検証-』森永 武人(神戸学院大学附属中学校・高等学校)
高等学校の次期学習指導要領における『探究』の位置付けは大きく、しかしその一方で、各学校における具体的な取り組みは手探りの状況である。また、探究活動を通じ、どの様な力が身についたのかについて可視化することが難しい現状がある。今回の報告では、探究活動に関し、とりわけ『体験活動』と『非認知能力の育成』について可視化することを目的としている。具体的には、コロナ前に行った活動とコロナ禍において行った活動を比較する
もう一つは、学校全体の取り組みとして行っている『講演会活動』を取り上げ、その後の行動変容に繋がっていることについても報告したいと考えている。
1ー9『学生の起業行動とアントレプレナーシップ教育との関係性』油井 毅(愛知学院大学)、森口 文博(大阪市立大学)
昨今、学生へのアントレプレナーシップ教育を実施する大学が増加しており、起業に対する気運が高まっている。それに伴い、アントレプレナーシップ教育の効果や起業意思を高める要因等の研究が蓄積されている一方で、実際の起業行動に影響を与える要因に関する研究は少ないのが現状である。
本発表では、教育プログラムの概要や狙いを報告するとともに学生の起業行動の要因に関する考察を述べる。具体的には、徳島大学でのアントレプレナーシップ教育(イノベーションチャレンジクラブ)を受講した10名を対象としたアンケート調査結果、またそのうち徳島大学発ベンチャーである株式会社KAIを起業した2名の学生、起業しなかった4名の学生を対象に実施したインタビュ―調査結果を報告する。調査では「個人の性格」「イノベーションチャレンジクラブ」「起業支援」に関連する項目に着目し、起業行動に影響を与える要因、起業行動を阻害する要因について考察を行った。
1ー10『高大連携が探究学習に及ぼす効果検証』清水優菜(兵庫教育大学)、荒井英治郎(信州大学)
本研究は,長野県立の高等学校A校の2020、2021年度の1年生を対象として,高大連携による「大学連携ゼミ」を取り入れた総合的な探究の時間を実施し,その効果を「批判的思考態度」と「課題価値」の観点から検討した.その結果,(1)ゼミの分野・種類・方法に関わらず、「批判的思考態度」については全下位尺度、「課題価値」については興味価値以外の下位尺度が高い水準からより高まること,(2)2021年度の方が証拠の重視の向上が大きかったこと,(3)参加したゼミの違いは客観性と興味価値の約10%説明するが、他の下位尺度をほとんど説明しないことが示された.得られた知見から,総合的な探究の時間に高大連携を取り入れることが汎用的な資質・能力や学習動機づけの向上に及ぼす効果が詳細に示された。
1ー11『中高生向け社会課題探究プログラムの実践報告 -社会課題を知り行動し、自分を見つける Kokorozashi-Based Growth-』西田 将浩(一般社団法人進路指導・キャリア教育支援機構 OCES)
OCESは、世の中を良くする志士を一人ずつ発掘育成することを目的とし、提携先の高校で、放課後希望者に集まってもらい、授業を行う寺子屋事業を展開している。寺子屋事業の特徴は、高校生の「志」を育むことである。そのために、課題設定から解決のためのアクションを主体的に行えるプロセスづくりや、実社会との接点などの仕掛けがある。一過性の課題解決学習ではなく、「自分の可能性を引き出し、自分が世の中の課題を解決したい」という志を醸成することで、高校卒業後も社会課題に資する人材を輩出している。
具体的には、最初は社会課題を発散的に学び、事実確認を行う。その過程で自身が探究したい課題を特定し、原因を究明し、その根本原因に対する解決策を、「ビジネス」「科学技術」「政策」「市民活動」の4観点で考え、PDCAで行動する、社会で必要な能力を育む社会課題探究プログラムである。
発表当日は、プログラムの概要と実践報告、成果と今後の展望について報告する。
1ー12『産学連携による大学構内での小空間制作を通した人材育成 -空間デザイン実践の取り組み-』倉知 徹(新潟工科大学)
新潟工科大学では、2019年度と2020〜2021年度に学生によるアイディア・設計・DIY施工と産学連携により、大学構内に小空間を制作した。2019年度は「空間デザイン実践2019」と題し、大学校内の廊下の一角に、木造で交流スペースを制作した。2020〜2021年度は「空間デザイン実践2020+1」と題し、学食脇の屋外空間にレンガ等によるバーベキューコーナーを制作した。どちらも、学生のDIY施工による大学内の課題解決と、企業の若手社員による学生への技術指導と協働作業による若手社員の能力伸長を目指した。
2つの取り組みを通して、参加学生は身近に存在する潜在的な課題の発見と、その解決につなげる提案、さらに空間として実現するプロセスを経験した。このプロセスを通して、参加学生にとってのイノベーション人材の育成と、企業の若手社員にとっての新たな価値について論じる。
1ー13『徳島大学の新入生、新任教員に対するオンライン・イノベーション・ワークショップの取り組み』片山哲郎、金井純子、小出静代、玉有朋子、北岡和義(徳島大学)
徳島大学理工学部の新入生の授業の一環として139名の学生を対象者にオンラインによるイノベーション・ワークショップを行った。テーマは「大学研究の社会実装」とし、ワークショップ設計のコンセプトは「徳島の未来」と「学科内の教員の研究」を組み合わせで新規性のあるアイデア発想を体験する授業とした。学科に所属する教員の研究を一年生から触れるという学生の観点からだけでなく、新入生が興味を持つ研究事例について教員が学ぶ観点から双方向インタラクティブ・ワークショップとなった。発表では教員向けのイノベーション・ワークショップ事例と比較し仲間づくりの観点からのワークショップの有用性についても報告する。
1ー14『コロナ禍における学生産学連携活動 ー大工大RDクラブの事例ー』長谷川光一(大阪工業大学)
大阪工業大学では、2017年度からXportという拠点を立ち上げ、オープンイノベーション活動を開始した。Xportの活動の1つに、学生と企業とがコラボレーションする産学連携活動がある。RDクラブと名付けられたこの活動は2021年度で5年目になる。平均10社程度の企業と100名超の学生が参加するこの活動は、企業が出す課題に対する解決策を学生が考え、半年弱の活動後にソリューションを提案するというものである。活動3年目には、学生の考えたアイデアによって、新機構を持つ製品開発に成功した事例が現れ、特許出願につながる等、成果が着実に上がっている。
しかし、活動の4年目にあたる2020年度以降2年間は、コロナ禍での活動となった。感染を避けるために主としてオンラインでの開催となったため、対面での活動では存在しなかった問題が現れ始めた。本発表では、RDクラブの5年間の活動と、コロナ禍での学生産学連携の課題について報告する。
1ー15『価値創造の考え方―神戸大学バリュースクールの活動成果―』鶴田宏樹(神戸大学)、祗園景子(神戸大学)
神戸大学は2020年4月にバリュースクール(V.School)を設置した。神戸大学V.Schoolは、①価値創造およびその教育の研究・開発、②異なる専門分野の人たちが交流する価値共創の場の2つの機能を備えている。①の成果として、価値を動的な現象として捉え、主観と客観の関係を「期待」「課題」「結果」「満足」の4つの要素で表した「価値創造スクエア」が生まれた。これは、「価値」や「価値創造」にアプローチするための思考のモデルであり、一つの考え方である。また、学生らが価値を具象化することに取り組むProject-based Learning(PBL)形式の授業を開講した。PBLから複数の学生プロジェクトが立ち上がり、学生が自主的に活動している。②の成果として、3名の異なる分野の専門家らから話題を提供してもらい、それらに基づいて議論する「V.Schoolサロン」を定期的に開催した。本発表では、「価値創造スクエア」について紹介するとともに、設置準備を含む3年間にわたる神戸大学V.Schoolの活動内容・成果ついて報告したい。
1ー16『大人数の受講生を対象としたオンラインによるイノベーション教育の設計・実施 ―全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム・コース1を事例として―』
鶴田宏樹(神戸大学)、三上淳(小樽商科大学)、加藤知愛(パイロット・プラクティス株式会社)、祗園景子(神戸大学)、石田祐(宮城大学)、友渕貴之(宮城大学)、金井純子(徳島大学)、北岡和義(徳島大学)、和仁裕之(文部科学省)、森高智弥(文部科学省)、中原康行(文部科学省)、後藤燿(東北大学)、武田浩太郎(東北大学)
アントレプレナーシップ人材の裾野を広げることを目的として全国の大学生・大学院生を対象としたオンラインによる試行プログラム「文部科学省令和3年度産学官連携支援事業委託事業 全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム コース1:SDGs,地域の社会課題を本気で考えるためのコース」について報告する。「レジリエント社会の構築を牽引する起業家精神育成プログラム」に基づいて、①問題設定・問題分析,②課題設定とブラッシュアップ,③ソリューションアイデア創出,④価値定義,⑤社会的価値と経済的価値,⑥発表について講義とグループワークを設計・実施した。申込者数は250人、受講者数は第1・2回が134人、第3・4回が105人、第5・6回が98人であった。多数の受講生の習得度を測定するとともにプログラム実効性を評価する評価系を設計・検証した。大人数の受講生に対するオンラインプログラムの課題について整理する。
1ー17『アントレプレナーシップ教育プログラムを運営する指導・支援人材の育成プログラム実施報告』島岡未来子(早稲田大学/神奈川県立保健福祉大学)
アントレプレナーシップ教育に対する社会的ニーズが、かつてないほど高まっている。これは激変する社会環境に対応し未来社会を創造するためには、様々なセクターで活躍するアントレプレナーを育成すること、そしてそのアントレプレナーの育成にはアントレプレナーシップ教育が極めて有効であることが、様々な領域で認識されてきたことを示している。しかし、アントレプレナーシップ教育を実施できる人材数は全国的にも限られており、喫緊の対応が求められる。筆者の所属する大学は、2020年に[SCORE大学推進型(拠点環境都市整備型)]に採択された。柱の一つはこのような指導・支援人材の育成である。育成事業は2021年5月から始まり2022年3月に終了予定である。これまで50名近くの全国の教員/職員が参加している。本研究発表では、事業の全体設計と実施概要を述べる。事業では平行して参加者の意識変化についての調査分析行っている。その予備的な分析結果についても発表する。
1ー18『極短期間でのデータサイエンス教育プログラム:東京海洋大学での実施例』米森 星矢(合同会社 8m Lab)
世界中でデータサイエンス領域への注目は依然として高く、有料・無料のオンライン学習リソースも豊富に存在するほか、多くの大学がデータサイエンス学習カリキュラムを設定している。その一方で、実務レベルのデータサイエンス人材不足は続いており、背景には実践機会の不足や、カリキュラム終了後の学習継続が難しい、などの問題があると考えられる。本研究は、東京海洋大学と共同して行った、極短期間でのデータサイエンス教育への取り組みである。時間的制約が大きいなかで、「自学やリスキリングへの心理的ハードルの低減」、「将来のキャリア形成における選択肢の拡大」など、長期的なアウトプットを見据え、学部4年生向け計15時間の短期プログラムを実施した。実施後のアンケート結果に基づくプログラムの問題点や成果から、目的としていた長期的なアウトプットの可能性や、今後の継続的なプログラム実施・改善のためのポイントが示唆された。
1ー19『イノベーション教育の成果発信としての書籍化』平岩渉(東京大学/ i.school)
イノベーション教育プログラムi.schoolでは、2020年度よりワークショップの成果を書籍化し、kindle出版することで、その成果を外部に発信していく活動を開始しました。本報告では、書籍化から出版に至るまでのプロセスと、出版後の展開に関して発表します。
書籍化にあたっては、アウトプット自体をピックアップしてまとめるにとどまらず、発想のプロセスの全体を振り返り、外部発信を前提に整理することで、大きな学習効果が得られるものと考えられます。そして、出版することで成果が形となり年々蓄積されるだけでなく、出版の過程や出版後において外部からの反応を得られることは、ワークショップに対するモチベーションを高め、より充実した振り返りができることが期待されます。
本報告では、2020年度の書籍化プロジェクトにおける経験に基づき、イノベーション教育の成果とその発信の一形態としての書籍化の可能性を述べていきます。
1ー20『イノベーション社会復活・実現に向けての「もう一つの課題(非認知力向上)」に関する一考察 〜令和版 学問のすすめ』谷田貝孝
動画・資料
平成の企業組織のイノベーション力低下について、自信喪失(ネガティブ思考)によるコンピテンシートラップとする考え方がある。
イノベーション教育理論は、創造性に関する認知能力のメカニズム、およびその学習可能性と具体的方法論を明らかにしつつある。一方、認知メカニズムはネガティブな心理状態でも発揮できるのか?最近のポジティブ心理学、ポジティブ組織行動論は、ポジティブさの学習可能性とその具体的方法論に迫っている。
イノベーション能力を発揮させるためには、非認知(ポジティブさ:心理的資本)と認知(創造的推論力)を一体的・統合的に高めていく必要があると考えている。
上記の問題意識を踏まえ、認知・非認知能力向上を統合したプログラムの理論化と社会実装のための具体的プログラム開発が急務であると考える。
本研究では、自信を取り戻しつつ、イノベーションプロジェクトに取り組むための具体的学習プログラムの理論的背景を整理しつつ、誰もが参加・挑戦できる実践的プログラム開発の可能性を探る。
1ー21『東工大エンジニアリングデザインプロジェクト2021年度の振り返り』坂本啓
東京工業大学 大学院エンジニアリングデザインコースでは7つの異なる専門分野から集った修士1年生たちが、学外から参加する美大生、社会人と共に、半年間をかけて新たなプロダクトを開発する「エンジニアリングデザインプロジェクト」講義を2015年度から実施してきている。2021年度は5社のパートナー企業から提示された4つの課題に対し、受講生9チームがユーザーリサーチから活動を始めて解決策をデザインし、機能プロトタイプを製作してユーザーテストまでを実施する、ハードな講義を走り切った。本講演では、講師陣が講義7年目で導入した新たな工夫を紹介し、受講生の活動の過程・アウトプットを分析して工夫の効果を評価する。
1ー22『レジリエント社会の構築を牽引する起業家精神育成プログラム ー3年間の成果と今後の課題ー』武田浩太郎(東北大学)
文科省EDGE-NEXTの共通基盤事業として開発・実施してきた「レジリエント社会の構築を牽引する起業家精神育成プログラム」の3年間の成果と課題、今後の計画について紹介する。本プログラムは、防災・減災・復興に資する新規事業のアイデア創出を志向しており、社会課題解決手法の習得と被災地フィールドワークによるアイデア創出・検証を特徴とする。本プログラムの当初の目標は、国際展開および「レジリエンス人材100名の創出」であったが、数々の不測の事態の影響により、プログラムマイルストーンの修正や、プログラムの設計・運営の変更を余儀なくされてきた。特に、COVID-19の影響でオンライン化が進んだ2020年以降、運営チームがどのように対処してきたのかについての事例を紹介し、複数大学が連携するアントレプレナーシップ教育プログラムの継続性や運営における課題等について議論するきっかけとしたい。
【2】ワークショップ手法部門
2ー1『オンラインディスカッションにおける音声ピッチ分析によるファシリテーション効果検証に関する研究』平柳卓也(工学院大学)、見崎大悟
近年のコロナ禍によって人々のコミュニケーションはオンライン上でのやり取りに移行し、多様な価値観を持つ者とオンライン上でチーム活動をする機会が増えた。チームでディスカッション活動をしていく上で、個人に求められる能力としてファシリテーション能力があり、教育界では学生同士の協調学習を通じて、より主体的・対話的な人材を育成するためファシリテーション能力の育成を重要視している。本研究ではファシリテータへのフィードバック指標の提案を目的に、オンラインディスカッションにおける会話音声の基本周波数を抽出し、それを対話の活性度指標としてディスカッションを定量評価した。これにより、ファシリテーション未経験である学生でも扱える汎用的な質問形式や会話手法のフレームワークを明らかにし、現代の学生に求められるチームワーク力や創造的問題解決能力の教育的評価の検証に貢献する。
2ー2『「未来の本屋」イノベーションワークショップの設計、実施とその分析』
北岡和義(徳島大学)、玉有朋子(徳島大学)、片山哲郎(徳島大学)、金井純子(徳島大学)、小出静代(徳島大学/一般社団法人 大学支援機構)
徳島大学では、新規アイデア創出のためのワークショップ設計、実施の質向上を目指し、一般社団法人日本社会イノベーションセンター(JSIC)において実施されているファシリテーター養成講座を通じて、イノベーションワークショップの設計、実施手法の習得を進めている。同講座を通じて習得したイノベーションワークショップに関する知識や手法は、本学における各種授業や学内外のワークショップへ積極的に活用を行い、効果を挙げている。本年度には、地元大手書店である株式会社平惣と協同で、電子取引や電子書籍が普及した世界においても人々が足を運ぶ「未来の本屋」を実現する新規アイデアを創出するイノベーションワークショップを設計し、実施を行った。今回はその設計、実施と分析内容について報告する。
2ー3『アフターDX・OMOを想定した産学連携活動における課題解決手法に関する一考察』峰晴元就、横山広充(大阪工業大学)
本学では、企業の課題解決を通したイノベーション人材の育成に取り組んでおり、その中心的な活動としてRDクラブが位置付けられる。RDクラブとは地域や企業が抱える実社会の課題に対して、デザイン思考の手法を用いて学生が課題解決をしていく活動であり、本発表では参加企業の中からサントリーシステムテクノロジー株式会社の課題「アフターDX・OMOの新たな飲料サービス」の取組みについて述べる。具体的には、消費者行動が従来の「商品だけではないインフルエンサーの影響」など複雑化し、さらに購買層のマスボリュームがデジタルネイティブ世代に置き換わっていく中で、デジタルネイティブ世代であり将来の主力購買層である学生がどのように未来予測をし、プロトタイピングを行ったのか、ファシリテーターの立場から課題解決案そのプロセスについて報告する。
2ー4『自治体・地元企業・大学連携による「高校生xサスティナブルあわ(OUR)講座」オンラインワークショップの取組み』玉有朋子(徳島大学)
徳島県教育委員会は、県内高校生を対象とした「高校生xサスティナブルあわ(OUR)講座」を開催した。
この講座は、高校生が地域におけるSDGsの推進や消費者市民社会の担い手として活躍できる人材となるよう育成することを目的としている。
1、2回目の講座では、地元企業KITO DESIGN HOLDINGSの協力を得て、那賀町木頭地区での取り組みを高校生たちに知ってもらい、3回目は、徳島の地域課題に対して学びをどう活かすかをテーマとして徳島大学CO.TOKUSHIMAと学生によるオンラインワークショップを行った。
ワークショップでは、高校生が作成したスライドやグラフィックレコーディングを使い、Googleスライドで双方向のやりとりをしながらグループでの対話を重ね、学びを未来へ活かすためのアクションについて発表した。
今回の発表では、3回目のオンラインワークショップの設計、手法について報告する。
【3】研究部門
3ー1『肯定し積み上げる時間と批判的に検討する時間:ワークショップ中の発言の分類に基づくチームプロセスのクラスタリング』彭思雄(東京大学/ i.school)
イノベーションを起こすためには、チームが多様な知識・専門性・価値観を活かして協同することが不可欠であり、多くのイノベーション教育にチームワークが取り入れられている。
チームワークの過程には様々な局面が存在するが、どのような局面が存在するのか、そして各局面の経験が成果物の質やチームの関係性にどのような影響を与えるのかは、教育プログラムを改善する上で有用な知見であるが、十分明らかになっていない。これを明らかにするための第一歩として、本研究ではイノベーション教育プログラムi.schoolで行われたアイデア創出ワークショップにおいて、参加者の発言を分類し、分類された発言の頻度を元に3分間のチームワークをクラスタリングした。その結果、他人の主張を肯定し主張を積み上げる時間や、他人に主張を批判的に検討する時間などがあることが明らかになった。今回の分析結果に加えて、どのような発言の分類が有効か、どのように分類を自動化できるかを参加者と議論したい。
3ー2『「うなずき」はチームワークを理解するために有効か?』村田亮(i.school)
より良いイノベーション教育プログラムを提供する上で、チームワークをサポートする手法の開発は重要であるが、チームワークの過程をリアルタイムで測定し可視化することは、特に有望な領域である。発話データや生体データなど様々なデータの有用性が検討される中、うなずきはこれまで十分に注目されてこなかった。うなずきは、相手の発言を聞いていること、説明を理解していること、主張に賛同していることなどを表すとともに、これを相手に伝えることで、相手に受容されている感覚を与え信頼関係の構築に寄与する。チームワークの分析におけるうなずきに関する指標の有用性を検討するため、私たちはイノベーション教育プログラムi.schoolで行われたアイデア創出ワークショップを題材に、うなずきの多い時間や少ない時間におけるチームワークを観察した。うなずきに関する指標の有用性、その測定方法などを参加者と議論したい。
3ー3『デザインプロセスにおける個人の持つ専門性が課題定義及びアイデア創出過程に与える影響』須賀裕也(東京工業大学)
本研究の目的は,デザインプロセスにおいて個人の持つ専門性の差異が課題定義・アイデア創出過程に及ぼす影響を明らかにすることである.具体的には,工学を専門とする大学生/大学院生15名,芸術を専門とする大学生/大学院生11名を実験参加者として,課題定義やアイデア創出などの個人間及び群間比較実験を行った.実験では「デザインプロジェクトにおけるユーザーインタビュー記録」をもとに,実験参加者から「課題定義・アイデア創出過程で記述するメモ」「メモをもとにした聞き取りデータ」を収集した.メモの採り方やその内容について,聞き取りデータと対照させた詳細なデータ分析により,実験参加者の思考過程を明らかにし,専門性の差異による課題定義・アイデア創出過程に対する影響を検証した.この結果から,デザインプロセスにおける専門性の差異が起こす現象についての理解の向上が期待される.
3ー4『防災システムモデルの構築 ~防災政策アントレプレナーとして~』米田夏輝(北海道大学)
EDGE-NEXTのレジリエンスプログラムに参加して、災害復旧を牽引する「公的サービス分野におけるビジネスモデル」を設計した。過去に災害の少ない地域では、災害予測の経験値が低いために、防災計画と地域の実情とが乖離している例がある。この課題を克服することを目的に、最新データを活用して災害に備えるビジネスアイディア「防災システム(DPES)」を発表した。これを実現させるため、北海道登別市と共に、行政官自らが、ハザードマップなどを作成できるように、専門知識を持つ大学関係者がサポートする環境を整えつつある。行政主体で地域防災を実情に則して考えることを通じて、行政官の防災政策形成能力が高まるだろう。また、災害業務の内部化による外注費用の削減などの福利的な効果を見込める他、住民との対話などを通じて地域の防災力の向上などの社会的影響を与えることもできるはずだ。よって、このモデルは、公的サービス分野におけるイノベーションモデルの1例になると考えている。
3ー5『コロナ禍での学生プロジェクト活動を通して見えてきた創造性教育の成果と課題』森口 茉梨亜(徳島大学)
コロナ禍における大学生の対面活動は2020年度より厳しく制限されてきた。徳島大学の学生プロジェクトも例外ではなく、年度初めに立てた活動計画が、大学の制限や大会等の中止などにより、予定通りに進められないことが、学生のモチベーションに大きく影響を与えることになった。しかしながら、活動計画等を具体的に示したり、活動スタイル(オンラインまたは対面)を選別したりということを行っていくことで、当初は大まかにしか予定を立てられなかったプロジェクトも、必要な活動を必要な時間で行う計画が立てられるようになった。また、活動が停滞しているプロジェクトについては目的や手段が曖昧であるなどの問題が浮き彫りになり、学生指導についてのサポートが行いやすくなった。本発表では、自主的な学生プロジェクト活動について、教職員の支援をどの程度介入させることが、学生の自主性を損なわない創造性教育につながるか コロナ禍での活動から見えてきたことを基に報告する。
3ー6『NASAゲームをもちいた効果的なチームワーク学習に関する可視化手法の研究』小高拓馬(工学院大学)、見崎大悟
昨今のグローバル化,IT社会などの影響から今までのやり方では今の時代,これからの時代には適応しにくくなっている.教育の分野では国の方針では,対話的・主体的な要素を含めた「能動的な学習」に焦点を当てており,チーム学習が必要であった. また,2020年以降急激なオンライン教育へのシフトが行われた.それに対するこれまで行われてきた研究は,アンケート等の研究が多かった.オンライン環境下では,議論の内容や状況が比較的容易に録画され,学びの振り返りや効果の測定にとって価値がある情報があった.そのため,本研究ではオンライン上で意見合意ゲームであるNASAゲームを行った際に比較的導入しやすい装置を用いて,チーム学習の学生への振り返りに活用を考え,それらの評価・分析手法の提案をした.
3ー7『デザインプロセスにおけるインサイト生成時の共感と認知のフレームワークの統合』伊藤鑑(東京工業大学)
本研究は、デザインプロセスにおけるインサイト生成時の共感と認知のフレームワークを実験に基づいて総合することを目的とする。デザイン思考を6ヶ月以上学んだ工学系の大学院生10名、美術系の学部生1名と、3年以上デザインコンサルティング会社で働いている4名のデザイナーの合計15名の参加者に対して実験を実施した。参加者は与えられたインタビュー記録をもとに与えられた定型文に沿ってユーザーのニーズを定義するインサイトステートメントを生成しながら、ユーザーを理解しインサイトステートメントを定義する思考過程をコンセプトマップとして描いた。本研究では、その思考過程の定性的コーディングによる評価とインサイトステートメントの評価を行い、その結果インサイトを得る際に避けるべき思考のタイプが明らかになった。その結果をもとに、デザイナーのインサイトを得るプロセスを分類するフレームワークを提案する。
3ー8『ワークショップの簡易分析手法とその実践』瀧澤知樹、荻野将弘、鳥居 克哉(i.school)
イノベーション教育プログラムi.schoolではZoomを用いたオンラインワークショップを対象として、発話などのデータを用いた分析を行っており、その手法は確立しつつある。一方でZoomを用いないオンラインワークショップや対面でのワークショップにおける分析手法は未確立であった。今回の取り組みでは、単一の音声データや複数のICレコーダー録音データを用いて、発話者や対話の偏り・対話パターンの移り変わり・間の長さ・平均発話長を推定する、ワークショップの簡易分析手法を検討した。また簡易分析手法を実際のワークショップに適用し、その結果とワークショップの観察結果を比較した。今後は分析精度の向上と、本手法をWEBアプリとして実装し、ワークショップや会議の分析を簡易的にできるようにすることを目指す。
3ー9『実践的学習プログラムの受容性に係る 個人の影響要因とそれを考慮した プログラム設計支援策: アナロジーを用いたイノベーション ワークショップを例に』千 遼太(東京大学)
イノベーション教育ではワークショップ(以下WS)形式を採ることが多い。実践を通して学んでもらうイノベーション教育において、そもそも実践を受容しない参加者が少なからず見られ、グループとして期待される教育効果が上がっていないことが課題として認識されている。 学習者のプログラム受容性を向上させるWSを設計・実施するためには、個人の内面的特徴、ならびに内面的特徴と外部環境の相互作用を明らかにする必要がある。
そこで本研究では、以下の3点を研究の目的として設定し、検証を行った。
① 学習者が教育プログラム受容性に係る要因のうち、内部要因を特定すること
② ①で示した要因を満たした状態の実現のための介入手法を検討すること
③ ①〜②を踏まえた上でWS設計・実施上の示唆を導出すること
結果、3つの内部要因の特定し、トップダウン形式の介入の効果が限定的であることを仮説検証WSを通して導いた。それを踏まえた上で、WSのグルーピングに関する提案を行った。